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受験攻略の勉強術「何だったっけ?」とならない暗記のコツとは

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勉強に取り組むうえで、暗記に苦心している受験生は多いと思います。
世界的に見ても、日本は受け身の勉強が中心といわれていますが、単語帳やシートを使い、ひたすら淡々と覚えるだけの暗記は、得意な人と苦手な人に分かれる傾向にあるようです。

定期テストと違い、受験勉強は今まで学んできたことの積み重ねが問われるため「覚えたことを忘れない」のも重要ですが、それが意外と難しかったりします。

定期テストは一夜漬けで乗り切れますが、受験となるとそうもいきません。
コツコツと暗記した内容を忘れずに保ち続けるために、圧倒的な量を効率よく暗記するコツなどについてご紹介します。

 

記憶のしくみについて:

テスト前や検定前に一生懸命暗記してからしばらくは覚えていたのに、何もしないでいるといつの間にかきれいさっぱり忘れてしまうのはなぜでしょうか。
自分は覚えが悪いのか、それとも要領が悪いのかと落ち込む前に、記憶のしくみについて少しお話しましょう。

 

■定期テストを一夜漬けでやってはいけない理由

国立青少年教育振興機構が2016年に行った調査によると、日本の学生は中国や韓国といったアジアの他の国に比べて試験前にまとめて勉強する割合が高く、いわゆる「一夜漬け」をする学生が多いという結果が出ています。
出題範囲が狭く、覚える量も比較的少なくて済む定期テストの場合、一夜漬けで対応できてしまうからでしょう。

定期テストは点数が取れても、実力テストや模試になると急にわからない問題が増え、点数が下がって落ち込んでしまうことがあります。
これは一夜漬けで1度覚えた内容が記憶として定着せず、忘れてしまうことが原因です。
短期間で覚えても忘れてしまえば、受験勉強にも影響が出てきますね。

 

■エビングハウスの忘却曲線

ドイツの心理学者であるヘルマン・エビングハウスは、人間が1度覚えた記憶を忘れるまでの時間経過について研究し、グラフを使って「忘却曲線」として表しました。
被験者に意味のないアルファベットを3つ繋げてたくさん暗記してもらい、一定の時間ごとにどこまで覚えているかをデータにしたのです。

すると、覚えてから1時間以内に半分以上の記憶が忘れられ、翌日には7割以上忘れてしまうという結果が出ています。

また、その後に残った3割の記憶は1週間経ってもほぼ変わらず、ゆっくりと忘れていくという興味深い結果も出ています。
覚えても忘れなかった3割の記憶と忘れてしまった7割の記憶には、何か違いがあるのでしょうか。
なぜ3割の情報はすぐ忘れられずに、記憶として残ることができたのでしょうか。

 

■短期記憶と長期記憶

たとえば自分の名前や通っている学校の名前などは忘れませんが、初めて聞いた電話番号やお店の住所などは、多くの場合1度覚えてもすぐに忘れてしまいます。
人の記憶には種類があり、音や映像といった外部からの刺激に1~2秒ほど反応する感覚記憶と、数10秒から1週間程度で忘れられていく短期記憶、いつまでも忘れずに覚えていられる長期記憶というように脳の中で分類され、ストックされています。

人はパッと与えられた感覚記憶の中から「覚えよう」と意識を向けた情報について短期記憶として保持します。
この短期記憶で覚えられる情報はおよそ7~9つ程度という実験データもあり、それ以上多くの情報を記憶として保持するには、短期記憶から長期記憶へと定着させる必要があります。

長期記憶になれば忘れにくくなるうえに、より多くの情報を記憶することができるわけです。

 

■繰り返し覚えることで長期記憶になる

初めて聞いた電話番号をメモせずに覚えるとき、何度も繰り返し呟きますね。これを忘れてしまう前に、毎日何度も繰り返していると、やがていつまでも覚えていられるようになります。
英単語や漢字を覚えるときも、繰り返し書いたり、声に出して読んだりして覚えます。

一夜漬けで覚えた後に忘れてしまった内容は、短期記憶のまま定着しなかった記憶です。
これを長期記憶にするためには、更に何度も繰り返し暗記したり、他の知識と結びつけたりして覚える必要があります。

 

■「覚える」ことと同じくらい「思い出す」力が大切

暗記した内容は、記憶している間は当たり前のように覚えていられますが、1度忘れてしまうと思い出すのにとても時間がかかります。
よく似た単語やキーワードは思い浮かぶのに「あれ、何だったっけ」と肝心の情報を思い出すことができない、という経験はないでしょうか。

いくら記憶を定着させていても、多くの情報をたくさんの引き出しの中にしまっていると、どこに何をしまったかと、引き出しをあちこち開けることになってしまいますね。
実は繰り返し覚えて記憶を定着させることと同じくらい、覚えたことを必要なときに素早く「思い出す」ことも重要です。

では、どのような暗記方法なら効率が良いのか、思い出しやすくするためにはどんな工夫があるのか、以下に順を追って見ていきましょう。

 

効率よく暗記するためのコツ:

記憶のしくみについて理解できたところで、より効率的に暗記するための方法をご紹介します。「短期記憶は繰り返し覚えることで長期記憶になる」と説明しましたが、意味のない情報として覚えるよりも、他の情報と結びついた方が覚えやすくなります。
そういうとピンと来ないかもしれませんが、具体的には以下のような方法があります。

 

■音と紐づける

声に出して読んだり、替え歌にして覚えるなど、音声とセットで暗記すると記憶として定着しやすくなります。
単語や年表など、声を出せる場所では読み上げたり歌ったりして、図書館や電車など、声を出せないところでは録音して聞くのも良いでしょう。

 

■運動と紐づける

歩きながら暗記したり、エアロバイクや準備体操など、体を動かしながら覚えるのも効果的です。
運動で筋肉を動かすと代謝が上がって脳も活性化するので、ぼんやりと机に座って覚えるよりも記憶しやすくなります。

試しに部屋の中をウロウロしながら覚えてみてください。長時間同じ姿勢でいると肩こりや腰痛の原因にもなるので、軽い運動をしながらの暗記はおすすめです。

 

■視覚と紐づける

年表をチャートにして書き出したり、イラストを添えて強調する、といった視覚とセットにする方法もあります。
「青文字暗記法」という、覚えたい内容を青いペンで繰り返しノートに書く方法もあります。

これは普段目にしない色を使うことで、書かれた内容を視覚に印象づけて記憶させようというものです。
青い色には気持ちを落ち着かせて、冷静にする効果もあるといわれています。

 

■情報と紐づける

音や視覚以外にも、他に情報があればそれとセットで暗記することで記憶しやすくなります。
英単語や歴史の年表、用語だけでなく、その意味や説明までひっくるめて覚えるようにします。

たくさんの意味の薄い情報を1度に詰め込んだだけではほとんど忘れてしまうので「少しずつ、何度も、繰り返し」覚えることが大切です。
学習が進むと覚える内容が増えるので大変のように思えますが、覚えた内容は少しずつ定着していくので、暗記に割く時間は受験が近づくにつれ、次第に少なくなっていきます。

 

■時間差で紐づける

覚えた内容を定着させるために、1度暗記した内容は時間を置いてもう1度繰り返し覚えましょう。
まず覚えた直後におさらいをして、翌日もう1度暗記します。

今度は1週間後に同じ内容を復習し、その月の最後にもう1度復習します。
1か月に覚える範囲や、覚える科目についての簡単な勉強計画を立てておくとよいでしょう。

 

■睡眠で紐づける

暗記法とは違うかもしれませんが、記憶と睡眠には密接な関係があります。
人は寝ている時に記憶を整理すると言われていて、良質な睡眠を取れないでいると記憶力に影響を与えるという実験結果もあります。

また、寝る前に覚えたことは脳が整理しやすく、記憶に定着しやすいともいわれています。
その日に暗記したことを寝る前に軽くおさらいして、しっかりと睡眠を取るように心がけましょう。

 

こうして、さまざまな情報と紐づけた記憶は、しっかりと睡眠を取ることで脳に定着していきます。
次は、覚えた記憶を試験のときにサッと取り出すためのテクニックをご紹介します。

 

暗記した記憶を引き出すテクニック

音や色、イラストや説明といった他の情報と暗記したい内容をセットで紐づけることは、記憶として定着しやすくすることに加えて、その情報がきっかけとなって芋づる式に引っ張り出せる、というメリットもあります。
ほかにも、以下のようなテクニックを利用して更に記憶を引き出しやすくしましょう。

 

■「思い出す」訓練をする

参考書や単語帳にある情報をインプットするだけでなく、自分でも問題を作ってみましょう。
問題を作っているとき、頭では覚えた単語を思い出す、という状態になるはずです。

また、繰り返し暗記をしていると、覚えやすいものと覚えにくいものが出てきます。
覚えにくいものばかりを集めて問題を作って解いてみたり、自分にクイズを出してみたりするのも思い出す訓練になります。

 

■設問形式に慣れる

志望校が決まっている場合、赤本や過去問題集などで問題形式を確認し、繰り返し解いてみましょう。
設問での聞き方や出題傾向に慣れることで、記憶している正解を引き出しやすくなります。

思い出すことにかける時間が短縮できれば短時間で問題を解けるので、見直しチェックをする時間もできますし、何より心に余裕が持てます。
特に受験直前は、過去問題集を繰り返し解くことをおすすめします。

 

■答えと問題を交互に見ることを繰り返す

問題を解くとき、通常答えを見てはいけないものですが、答えと問題を繰り返し交互に見る、先に答えを見てから問題を解く、というテクニックもあります。
こうすることで、問題を見たときに答えが自然と頭に浮き上がるようになれば、問題をきっかけとして答えの記憶が引き出せています。

新しい問題集で先に答えを見るのに抵抗があるなら、復習のときに試してみるのもいいかもしれません。

 

■科目別記憶引き出し術

英語:単語を覚えるときに、その単語を使ったイディオムや例文を一緒に覚えたり、反対語や類義語をまとめて覚えておくと、引き出す際の「芋ずる」にしやすくなります。
スペルの練習は青ペンで、アクセントや発音は、声に出して繰り返し読みましょう。

国語・古文:漢字の読みは答えと問題を交互に見る方法が効果的です。
古文の意味は単語帳を使って、体を動かしながら覚えましょう。
2年生のうちから漢字検定の勉強をするのもおすすめです。

地理・歴史:地理や歴史は、自分で地図を書いて書き込んだり、チャートにした年表にイラストを入れたりして、自分で問題を作って解いてみましょう。
周辺地域や前後の流れをつかみながら答えを引き出すのがポイントです。
ダンスと歌で歴史を覚える動画も流行しましたね。

数学・理科:理数系の科目は問題集を解く勉強がメインになりますが、公式などは暗記が必要になります。
繰り返し問題を解くことで設問形式に慣れ、問題を見たら公式が浮かぶようになるとよいです。

 

■体調管理も大切

テストや試験の前に体調を崩したり、気になることがあったりすると、せっかく記憶していることも正しく引き出せなくなってしまいます。
気になることや心配なこと、辛いことがあれば1人で抱えず、両親や先生など、信頼できる大人に相談するようにしましょう。
特に受験が近づくと、精神的に不安定になりやすいです。

しっかりと睡眠を取り、適度な運動とバランスの良い食事を摂って体調管理を心がけましょう。

 

いかがでしょうか。
様々な暗記のテクニックや勉強法についてご紹介してきましたが、受験勉強は長期計画です。

時には、どんなに長時間勉強しても覚えられない日、というのもあるでしょう。
世の中には「パレートの法則」「2:8の法則」と呼ばれるものがあり、物事の8割は、優秀な2割によって動いているといわれています。
暗記についても、実際にしっかりと知識として定着するのは覚えたうちの2割程度であるなら、その2割がなぜ覚えられたのかを分析するとよいかもしれません。

勉強する時間の中で、暗記は特に大きく時間を取るものです。自分がいつ、どこで、どのように勉強したときに覚えやすかったかを分析して暗記の効率を上げ、更に覚えた内容を引き出しやすくすることで、成績の大幅アップが期待できるかもしれません。

執筆者:木村紫
貿易業務とライター業を兼務するシングルマザー。人より少し豊かな人生経験から、恋愛・健康・転職・ライフハックなど、様々なジャンルで執筆活動中。ダメな人への優しいまなざしに定評がある。


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