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「自分は夜型だから」という幻想…深夜の勉強の非効率性と徹夜の限界

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巷では、夜の方がより勉強が捗る夜型と朝の方が集中できる朝型の人間がいると言われています。この記事を読んでいる方の中にも、自分を夜型だと考えて、深夜に勉強している方も多いはずです。

しかし、実際には夜型の人間は存在しません。それどころか、心と体の健康面に負担がかかる深夜の勉強はとても非効率ですし、徹夜で定着できる知識の量にも限界があります。



夜型とは生まれではなく毎日の生活習慣によるもの

自分を夜型だと考えている方は、ここで自分のこれまでの人生を一度振り返ってみて下さい。幼い頃は誰しも、夜が更ける前にぐっすりと眠って、太陽がちょうど上る頃にすっきりした気持ちで目が覚める朝型生活だったはずです。

身の回りを見渡してみれば、5・6歳のうちから朝に寝て、夕方に起きる生活をしている子供はいないことがわかります。

夜型の人とは、高い体力と多様な欲求が育まれる中学生辺りから、少しずつ生活が夜にずれていき、いつしか完全な夜型の生活になってしまったケースがほとんどです。

現代は文明の発達に伴って、深夜でも明るい電灯の下で楽しめる娯楽が充実しているため、油断するとついつい夜更かししがちな環境となっています。

具体的には、深夜に見たいテレビ番組があることや、スマホで友人とメールや電話を長く行っていることなどが代表的な原因です。

このことから、人間は本来、深夜ではなく、昼間活動するようにできていることがわかります。



記憶が整理されたまっさらな早朝はもっとも知識を吸収しやすい時間帯です

早朝は頭が整理整頓された直後のまっさらな状態なので、勉強したことが頭に入りやすい時間帯です。

人間の脳には、睡眠中、その日にインプットされた情報を整理してくれる機能があります。その人にとって不要な記憶はどんどん忘れる一方で、重要な記憶はより強固に保存するために、側頭葉へ転送して長期的に記憶するようにはたらきかけます。

記憶の整理整頓が完了したばかりの早朝は、1日のうちでもっとも海馬に空きがある時間帯なので、勉強したことをどんどん吸収することが可能です。

逆に申しますと、人間が起きて活動すればするほどに、いつまでも記憶が整理されることなく海馬に蓄積される一方なので、記憶しづらくなっていきます。

つまり、徹夜の勉強で定着できる知識の量には限界があります。
そのため、毎日早朝から勉強を開始して、夜にはぐっすり眠ることがもっとも効率的な勉強習慣です。



ブドウ糖が不足している早朝は活性化した扁桃体が記憶力を高めてくれます

早朝から勉強をはじめることで、脳の大脳辺縁系に属する扁桃体という部分を活性化できます。扁桃体とは、人間の感情や本能など、さまざまな心と体のはたらきを司っている部分です。

毎日の快・不快や好き嫌い、喜怒哀楽はもちろんのこと、自分にとって重要な物事を確認するはたらきも担っています。

扁桃体のはたらきが早朝に高まる理由は、早朝特有のブドウ糖不足が関係しています。早朝ぐっすり眠った後は、誰しも前日の夕食を消化、吸収しきっているため、ブドウ糖も含めて多くの栄養素が不足しているものです。

扁桃体は、早朝にブドウ糖が不足している状態を危機状態と判断するので、扁桃体に合わせて脳のはたらきが活性化します。

同時に、扁桃体のすぐ傍にある海馬も刺激を受けて活動が高まるので、記憶力も向上します。扁桃体による記憶の向上は、空腹時にはいつでも期待できるので、早朝に加えて夕食前の勉強なども有効です。



早朝の勉強には限られた時間で多くの知識を記憶する締め切り効果があります

早朝の学習には心理学で提唱されている「締め切り効果」が期待できます。

締め切り効果とは、取り組んでいるあらゆる作業の残り時間が少なくなることに反比例して、その作業に取り組む際の集中力が向上していく現象です。

学生ならば、平日は決まった時間に通学する必要があるので、早朝の勉強には常に締め切り効果が生まれます。



毎日の積み重ねで身体のリズムはつくられます

人間の自然の姿は朝型ではあるものの、実際に、毎日夜中ならば集中できるのに、昼間は眠くてしょうがない方は多いはずです。

これは、毎日の生活リズムの乱れに原因があります。

1日か2日だけ徹夜をしても、生活リズムが乱れることはありません。深夜の活動をはじめた当初は、まだまだ身体のリズムが朝型なので、昼間の方が勉強に集中できる状態です。

しかし、その1日2日が積み重なり、1週間や2週間、1か月、半年と続いていけば、いつしか身体がその生活習慣に適応してしまいます。

人間には、ホメオスタシスと言われている、内部環境を一定の状態に保ち続けようとする恒常性があるからです。

つまり、昼間に寝て夜起きる生活を続けていくと、身体が無意識に集中できる時間帯を夜に持ってきてしまいます。

逆に申しますと、ただそれだけの話ですから、夜型の人であっても、1日ずつ昼間の生活を積み重ねていくことで朝型のリズムを取り戻すことが可能です。



受験勉強の目的とは、希望の学校に進学するために必要な知識を身につけることです。そのため、だらだら長く問題集や参考書と向き合うよりも、短い時間で集中して確実に知識を記憶することが大切です。

効率的に学習を進行するために、まずは夜型の生活を朝型に戻すところからはじめてみて下さい。


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