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大学入試の小論文対策は「いきなり応用から」やる

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大学入試の小論文を不得意とする受験生は少なくないでしょう。そのような人は「なるべく小論文を出題しない大学、学部を選ぼう」と考えがちかもしれません。

しかし、苦手だからという理由だけで避けてしまうのは、選択方法として適切ではないでしょう。なぜなら、苦手にする人が多い科目は競争が少なく、得意にする人が多い科目は競争が激化しているからです。つまり、苦手な人が多い小論文で勝負したほうが、小さな競争で勝てる可能性が高く、合格に近付きやすくなります。

では、苦手な小論文をどのように克服すればよいのでしょうか。大抵は「基礎から」勉強しようとしますが、それは正しくありません。小論文対策に限っては「いきなり応用から」が鉄則なのです。

小論文が得意になると「こんなにすごい大学」に入れる

小論文を得意科目にすると、いわゆる「すごい大学」が射程内に入ってきます。 慶應義塾大学の一般入試の科目をみると、文学部は「地歴、外国語、小論文」、経済学部は「数学、外国語、小論文」などとなっています。
そのほか、上智大学・文学部や青山学院大学・文学部、筑波大学・情報学部や横浜市立大学・医学部なども小論文を課しています。

もちろん、すごい大学に入るには、小論文以外にも、英語や数学や社会や理科などの一般教科を勉強しなければなりません。しかし、だからこそ「小論文効果」が発揮されるのです。

小論文の得点で優位に立てれば、一般教科での失点を挽回できるでしょう。小論文が出題されていない入試では一般教科だけの勝負になってしまいますが、小論文が得意な受験生は一般教科の点数を小論文で補うことができるのです。

小論文は、一般教科が苦手だけど「すごい大学」に入りたい受験生に起死回生(きしかいせい)のチャンスをもたらします。
そして、一般教科が得意な受験生にとっては、小論文は一つ上の大学に届く梯子になるのです。

なぜ「自分は小論文が苦手だ」と思ってしまうのか

これだけ魅力的な出題科目なのに、なぜ小論文を避ける受験生が少なくないのでしょうか。それは、「自分は小論文が苦手だ」と思ってしまうからです。

そもそも「文章を生み出すことが苦手」と思っている受験生は、最初から「小論文は無理」と決めてしまいます。小学校や中学校の「読書感想文」の課題でよい成績を残せなかった人も、小論文を嫌う傾向にあります。

また「小論文には正解がない」「小論文は選択型の出題ではない」と考えてしまい、苦手意識を強めてしまう受験生も少なくありません。
一般科目の勉強であれば、どれほど難解な問題であっても正解は1つであり、参考書や問題集には正解を導く方法が解説されています。そのため、一般科目は安心して勉強できるのです。
しかし、小論文の勉強では、「自分が正しいと思って論じた内容が、試験官の考えと合わなかったらどうしよう」という不安がつきまとうため、安心して勉強できません。

ただ、これらはどちらも正しくありません。小論文は「論文」と書いてありますが、「小」もついています。つまり、入試の小論文でつくる文章は、論文よりコンパクトな内容でよいということです。また、小論文は読書感想文のような感想は要りません。
さらに、入試の小論文には「正解」があります。「この要素にこのように触れていて、このような展開をすれば合格点」といった採点基準があるのです。つまり、入試の小論文では「新しい説」や「オリジナルの説」を求められているわけではないということです。世の中で常識的に考えられている説を論じさえすれば点数を得られます。
したがって、小論文も一般教科と同じように、頭のなかに入れた知識を答案用紙に書き写せば問題ありません。

「小論文には一般教科にはないメリットがある」

「小論文の勉強法と一般教科の勉強法はほとんど同じ」

この2項目こそ、小論文の魅力なのです。
それでは次に、小論文の勉強法をみていきましょう。

なぜ「小論文は基礎から学ばないほうがよい」のか

小論文の勉強法が一般教科の勉強法と少し違うのは、「基礎から学ばないほうがよい」「すぐに応用から入ったほうがよい」という点です。
決して「基礎を学ぶな」と言っているわけではない点に注意してください。

「すぐに応用を学び、終盤の追い込みで基礎を身につければよい」

これが、小論文の勉強法です。

そのため、小論文の勉強でも基礎が大切であることに変わりはありません。ただ、先に「基礎をしっかり固めよう」としてしまうと、そちらに時間が取られてしまい、小論文の点数で差がつく「応用」を身につける時間がなくなってしまうのです。
また、英語や数学の基礎はとても難しいのですが、小論文の基礎はとても簡単です。そのため、受験期間の終盤で、追い込み的に勉強すれば十分なのです。

ところが、「小論文の参考書」やネットの「小論文の対策」をみると、大抵は次のようなことから説明を始めています。

・小論文は作文ではない
・小論文では出題文を要約する力が重要だ
・小論文は構成を考えてから書き始めよう

これらのアドバイスはどれも正しい内容です。
しかし「小論文は作文ではない」という教えは、小論文の応用対策に取り組めばすぐに理解できます。
「作文は感想を入れることができるが、小論文では感想は禁物。自分の意見を記述するときは、同時に根拠も示さなければならない」というのが、「小論文は作文ではない」の大まかな内容です。

そして「小論文には要約力が必要」というアドバイスですが、要約力は現代国語や英語の問題を解くときにも必要なスキルです。つまり受験生は常に、文章の要約力のトレーニングが課されているということです。

小論文の構成についてですが、これはひとまず「序論、本論、結論の順に書いていけばよい」と覚えておいてください。

序論:「こういうことを書きます」という内容を短く書く
本論:「こういう証拠があります」「こういう情報があります」という内容を最もしっかり書く
結論:証拠と結論を結びつける。文字数は序論と同じくらい

この構成を守ることは、テーマ型小論文、課題文型小論文、データ型小論文でも同じです。

もちろん小論文の基礎については、もう少し深く学ぶ必要があります。しかし、ここに紹介した項目を頭に入れたら、すぐに応用に取りかかりましょう。

もうお気づきだと思いますが、小論文の基礎の勉強とは「文章の器」のつくり方を学ぶことです。しかし、小論文を課している大学の教授たちが知りたいのは「器の中身」に他なりません。
「文章の器」は必要ですが、小論文では最低限のものであれば問題ないでしょう。美しい器をつくる必要もありません。
しかし「器の中身」は、しっかりとした内容があり、必要な情報が盛り込まれた文章である必要があります。

小論文の応用の勉強とは、「論じるべき内容づくり」であり「情報集め」です。これは時間がかかる作業なので、まずはこちらから取りかかったほうがよいでしょう。

小論文は「いきなり応用から」学ぼう

小論文は「いきなり応用から」勉強していきます。小論文の応用力を身につける最短距離は、日本経済新聞や朝日新聞などの「全国紙」と呼ばれている新聞の公式サイトの「無料で読める記事」を要約することです。

日本経済新聞
一般記事の一部が無料ですので、これを使います。なお、日本経済新聞の社説は有料ですので、無理に使用する必要はありません。

朝日新聞
読売新聞
毎日新聞
これら3社の社説は全文が無料で公開されています。

ちなみに社説とは、その新聞社がある出来事に対してどのような意見を持っているかを記した記事のことです。

スマホやパソコンで新聞社の公式サイトを開き、画面に記事を表示しながら、まずはじっくり文章を読み、続いて要約していきましょう。
もちろん、自宅で新聞を取っている場合は、それを活用しても構いません。また、新聞を取っていない場合は、コンビニなどで購入してもよいでしょう。

新聞社の社説などの記事をじっくり読み、さらにそれを要約すると、次のスキルが身につきます。

・世の中のこと、世の中の流れ
・「受験生の世界」ではあまり使われないが「一般社会」では普通に使われている用語
・論理的で簡潔な文章のつくり方、無駄な装飾がない文章のつくり方
・情報の紹介の仕方
・相手を説得させることができる「文章運び」
・要約する力

もし要約することが難しい場合、最初は記事を丸々書き写すだけでも構いません。それでも十分、上記のうち「要約する力」以外のすべてが身につきます。

また、なぜ新聞が、大学入試の小論文対策になるかというと、小論文の問題をつくる大学教授たちが新聞を参考にしているからです。日本の新聞は中立な立場を取っているので、記事も中立な意見が多く、「考えの偏り」を避けたい出題者にとって、うってつけの題材といえます。

日本の新聞は解説記事が充実しており、これが小論文の構成と酷似しているのです。これこそ「相手を説得させることができる『文章運び』」なのです。

新聞記事はこう要約する

新聞記事の要約方法について解説します。ここでは例として、2019年1月21日の朝日新聞の公式サイトに掲載された「健康格差社会 命の不平等なくすために」というタイトルの社説を使います。

これは約1,800字の記事で、大きく4つのブロックにわかれています。最初のブロックは「前文」といい、「この記事で大体このような話をします」といったことが書かれてあります。小論文の序論に該当します。

残りの3つのブロックには「小見出し」がついています。小見出しとは、10~20字くらいで、次のブロックの内容を知らせるものです。小見出しはそのまま要約として使うことができます。

要約作業は、1ブロックごとに行います。この記事を要約すると次のようになります。
小見出しは「■」でそのまま書き写しています。



引用:朝日新聞「2019年1月21日 社説」

これで約500字ですので、大体4分の1に要約できました。実際の小論文学習では、こうした要約をノートに書いていきましょう。要約文をつくるためには少なくとも5回は元の記事を読み返すことになるはずです。それだけじっくり読むと、筆者(新聞記者)の「文章運び」が自分のものになっていきます。

また、「普段あまり使わない用語」にも注意しましょう。この記事であれば、「平均寿命」「過去最高を更新」「生活習慣」「健康格差」「悪循環」「低所得者」「摂取」「生活困難」「抑うつ」「子どもの貧困対策法」「生まれ育った環境」「実現をうたっている」「実態を把握」「是正・縮小」「ベジ・ファースト」「対策をつくって実施」「NPO」「負の連鎖」「社会保障制度」「国の土台」などが、用語チェックの対象となります。

こうした用語を積極的に、自分が書く小論文に使っていきましょう。
チェックした用語について理解が不十分だった場合は、電子辞書やインターネットの検索機能などを使って調べておくとよいでしょう。こうして勉強の幅を広げていくことも、小論文克服のコツです。

そして要約した文章を、さらに要約してみてください。例えば上記の要約文は、次のように短くすることができます。



引用:朝日新聞「2019年1月21日 社説」

これで約170字ですので、元の記事から10分の1にすることができました。

小論文学習は、1,800字の新聞記事を読み込み、それを500字程度に要約し、さらに200字程度に要約するだけで十分です。
最初は1時間~1時間半くらいの作業になると思いますが、慣れれば30~45分ぐらいで終わります。

この勉強法を1日1記事分、3カ月間(計90記事)続ければ、模試の小論文の点数は驚異的に上昇するはずです。
ただ、1週間に1記事分しか要約しなかったり、毎日1記事を要約していても1~2カ月しか経っていなかったりすると、成果は現れにくいでしょう。
小論文学習の成果は、コツコツ継続していくことで初めて現れます。そして一度、小論文スキルを獲得すると、その能力が継続する特長があります。

小論文は「方向性」と「ワード」で決まる

ここまでの解説を読んで、次のような疑問を持つかもしれません。

「入試本番の小論文で、これまで自分が読んだことがないテーマが出たら、これまでの新聞記事要約が役に立たないのではないか」しかし、決してそのようなことはありません。

入試の小論文試験では、さまざまなヒントが出されます。それらを活用すれば、「ベースとなる論調」を書くことができるでしょう。
文章のベースさえ出来上がれば、あとは新聞要約で鍛え上げた「論の持っていき方(方向性)」と「ワードの豊富さ」を駆使することで、十分合格点に達する小論文を仕上げられるでしょう。

入試の小論文の採点者は、実は小論文の結論は気にしません。
例えば、「開発と環境保護のどちらを優先すべきか」といったテーマが出されても、「開発こそ重要」という内容にしたからといって低い点数がつくわけではありませんし、「環境保護を優先すべき」と書いたからといって高い点数がつくわけでもありません。
小論文で問われているのは、「その結論をどのように導いたか」という部分だからです。

まとめ

入試の小論文において、「大論文」は必要ありません。話が大きすぎたり、構想が壮大すぎたりする内容の大論文は、むしろ採点者によって弾かれてしまうでしょう。
理屈を丁寧に積み重ねている文章が、小論文では好まれます。理屈には、「納得できる理屈」と「屁理屈」がありますが、必要になるのはもちろん前者であり、その納得できる理屈は、知識と情報でつくられます。
だからこそ小論文の学習では、まず「知識と情報の蓄積」に努めたほうがよいのです。

執筆者:木村紫 
貿易業務とライター業を兼務するシングルマザー。人より少し豊かな人生経験から、恋愛・健康・転職・ライフハックなど、様々なジャンルで執筆活動中。ダメな人への優しいまなざしに定評がある。


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