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英語が苦手な人は勉強モチベーションを「上げる」より「落とさない」ことに注力を

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大学受験において、モチベーションはエンジンです。
入試までの道のりは長くつらいので、「やる気」や「合格への願望」や「大学に入る動機」といったモチベーションを使って乗り切らなければなりません。そして、モチベーションさえ高めてしまえば、仮に受験勉強を始めた時点は偏差値が低くても、猛チャージをかけてぐいぐい学力を上げていくことができるでしょう。

受験勉強に欠かせないモチベーションですが、その他の教科のモチベーションを高めることができても、英語のモチベーションだけ上がらない受験生がいます。
英語はほぼすべての受験生の必須科目なので、英語でつまずくと致命傷にもなりかねません。英語モチベーションは、合格の扉を開く重要な鍵です。

しかし、英語が好きでない人や英語への苦手意識を払拭できない人は、何をしても英語のモチベーションを上げられないかもしれません。
そのような人は無理に「上げよう」とするのではなく、「落とさない」ことを心がけましょう。

なぜ英語の学力が上がらないのか

英語学習のモチベーションについてみる前に、受験英語の特徴について考えてみましょう。受験英語の特徴がわかれば、英語の学力が上がらない理由もわかるはずです。

英語学習がその他の受験科目の学習と決定的に異なるのは、言語の獲得を目指しているという点にあります。
現代国語や古文や漢文も言語に関わる教科ですが、この3科目は言語の解読を目指しているのであって、言語の獲得は目指していません。
現代国語は現代の日本語を扱いますが、受験生はすでに日本語を獲得しています。現代国語とは、受験生に日本語の「解読」を問う試験なのです。
また、古文や漢文は、多くの受験生にとって未知の言語ですが、この2つの言語を社会で使うことはありません。つまり、古文と漢文を教えている高校も、古文と漢文を入試に課す大学も、教養や知識として覚えさせようとしているということです。

ところが英語については、中学や高校の英語教師も大学も、生徒や受験生に第2言語を身につけさせようとしています。英語の授業や入試の英語科目は、新しい言語の獲得を目的にしているのです。

英語以外の受験科目は、日本語で学び、日本語で理解し、日本語で考えます。日本史の問題も代数の問題も物理の問題も、学校の授業を聴いていれば「完全にわからない」ということはなく、少なくとも「何を問われているのか」くらいはわかります。

しかし大学受験レベルの英語の問題は、英語という言語を獲得していないと解くことはおろか、何を問われているのかすらわからないでしょう。

例えば、2018年のセンター試験に次のような設問がありました。

空欄( )を埋めるには、(A)と(B)をどのように組み合わせればよいか、下の1~8のうちから一つ選べ。

 

Shelly: I can’t wait till next Tuesday.

Lisa: What’s happening next Tuesday?

Shelly: Don’t you remember? There’s going to be a jazz concert afterschool.

Lisa: Really? I thought it ( )

 

(A)was going to be

(A)on Thursday,

(A)because I’m wrong.

(B)was planning to be

(B)on Tuesday,

(B)but maybe I’m wrong.

 

1:A→A→A 2:A→A→B 3:A→B→A 4:A→B→B

5:B→A→A 6:B→A→B 7:B→B→A 8:B→B→B

 



この問いはそれほど難易度が高いわけではありませんが、英語がわからないと何を問われていてどのように考えたらよいのかもわからないでしょう。英語の問題には「日本語のヒント」がありません。英語の問題は、すべて英語の知識だけで解かなければならないのです。

この問いの正解は2です。しかし、正解を知った後でも、wasとgoingとtoを単独で暗記しているだけで、「was going to~(〜するつもりだったけどそうはならない)」を慣用句として理解していない人は、なぜ2が正解なのかわからないでしょう。
英語の問題は、「わかる」と「まったくわからない」がはっきりしていることが多い傾向にあります。そのため、英語が苦手な人は、少しくらい勉強しただけではなかなか成績が上がらないのです。

覚えにくく忘れにくい英語、短期集中でも効果が上がる理科・社会

言語は、覚えにくく忘れにくい、という特徴があります。日本に生まれ日本語で育てられても、一定の年齢にならなければ日本語を使うことはできません。しかし、一度日本語を獲得してしまえば、もう忘れることはないのです。
この現象は、第2言語として英語の獲得を目指すときにも起きます。中学時代に英語の基礎を身につけた人は、高校の英語の授業や大学受験の英語の勉強をスムーズに進めることができます。
しかし、中学英語という基礎がない人は、大学受験の英語学習に時間を割いても、なかなか成績が上がりません。

一方、物理や化学などの理科や、日本史や地理などの社会は、短期間に集中して学習し、学習した範囲が出題されればそれで解答することができます。

理科や社会は短期集中の勉強法でも効果が出やすいのですが、英語は体系的かつ全体的に学ばなければ得点を伸ばすことができません。
したがって、英語が苦手な受験生ほど「モチベーションという勉強のエンジン」が必要なのですが、英語が苦手な人ほど英語モチベーションを高めづらいのです。なぜでしょうか。

そもそもモチベーションとはなんなのか

そもそもモチベーションとはなんでしょうか。英和辞典でmotivationを調べると「動機、動機づけ、刺激、やる気」といった意味が紹介されています。
受験のモチベーションは、「合格への願望」や「大学に入る動機」と言い換えることができるでしょう。
つまりモチベーションとは、気持ちの問題なのです。

モチベーションが求められるのは、受験勉強だけではありません。部活でも、文化祭の運営でも、生徒会活動でも、高校生活のあらゆる場面でモチベーションが必要になります。
モチベーションが高まると「丁寧にやろう」「徹底的にやろう」という気持ちになり、長時間同じことをしていても「飽き」が生じません。そのため、モチベーションが高い人は、質の高い仕事を成し遂げることができます。
逆にモチベーションが低いと「手を抜こう」「すぐ終わらせたい」という気持ちになり、すぐにその作業に飽きてしまいます。これでは質の高い結果は得られません。
モチベーションが「エンジン」と呼ばれるのは、そのためです。

そうであるならば、「合格への願望」や「大学に入る動機」を強めれば、学習モチベーションが上がるはずです。
「モチベーションが上がらない」と苦しんでいる受験生は、今一度、「なぜ自分は、あの大学に入りたいのか」を考えてみてください。
「ただなんとなく有名な大学だから」という理由しかなければ、勉強を1日休んでも構いませんので、「あの大学に入りたい理由」を強化してみてください。その大学に行って、キャンパスのなかを歩いてみるのもよいでしょう。
大学によっては、部外者でも学生食堂を利用することができます。そこでランチを食べていれば、「先輩たち」の会話が耳に入ってくるはずです。彼らはサークルの話や講義の話、就職活動の話に花を咲かせているはずです。
大学生の楽しい姿や凛々しい姿を目の当たりにすれば、「彼らの後輩になりたい」「この大学に入りたい」と強く思うようになります。
これがモチベーションの「種」になります。

英語が苦手な人が大学見学を終えて帰宅して、自分の机の前に座って英語の参考書を開くと、「嫌だな」と思うでしょう。「日本史の勉強をしようかな」と考えるかもしれません。
しかし、大学見学をした後であれば、「あの学生食堂であの大学の学生としてランチを食べるには、英語を最低ラインに押し上げておかなければならない」と思えるかもしれません。
これがモチベーション効果です。
好きな教科や得意な科目を勉強するのに、モチベーションは必要ありません。モチベーションは、苦手な科目を克服するときにこそ必要なのです。

なぜ英語モチベーションが上がらないのか

英語のモチベーションが上がらないのは、英語の必要性が理解できず、勉強の効果が出づらいからです。

英語に限らず教科の学習は「必要性」と「効果」のどちらかがあるとモチベーションがわきます。例えば、物理は苦手な人が多い教科ですが、物理を得意にする人は、物理の法則が自然界を支配していることを知り知的好奇心が刺激されたはずです。つまり、物理の教科が好きな人は「物理の必要性」を理解できるのです。
または、物理の法則にそれほど興味がなくても、物理をたまたま集中して勉強したところ一気に高得点を獲得した人は、勉強効果を実感でき「受験の武器になる」と認識できます。それにより、モチベーションが高まるわけです。

英語は実社会でとても役に立つ教科です。しかし、受験生のなかには「英語を使う仕事に就かなければ英語のスキルは生かせない」と思っている人もいます。これでは英語の必要性を実感できないので、モチベーションは上がりません。 そして英語の偏差値は、短期間の勉強では上がりません。英語が苦手な人は、英語の勉強量が膨大に感じるでしょう。それにより、「とても入試までに間に合わない」とあきらめてしまうのです。そのため勉強効果を実感できず、やはりモチベーションも高まりません。

英語の問題は、記憶している英単語が一定量に満たないとまったく解くことができません。しかも、単語だけ覚えても慣用句や文法を覚えておかなければ、中レベル以上の問題を解くことはできません。
せっかくwasとgoingとtoを単独で暗記しても、「was going to~」に関する設問には歯が立たないのです。これでは、英語学習のモチベーションが高まらないのは当然といえば当然でしょう。

なぜ英語モチベーションが下がるのか

英語のモチベーションが上がらない仕組みは以上のとおりです。
しかし、英語にはもうひとつの課題があります。英語のモチベーションには、対策を取らなければどんどん下がっていくという特徴があるのです。

英語の偏差値は、勉強していても気持ちが入っていないと落ちる性質があります。それは、英語は暗記だけで対応できる範囲が限られているからです。

再び、2018年のセンター試験から設問を引用します。

次の英文には、まとまりをよくするために取り除いた方がよい文が一つある。取り除く文として最も適当なものを,それぞれ下線部(1)~(4)のうちから一つ選べ。

 

Is the tomato a vegetable or a fruit? There was a U.S. court case on this issue in the1890s. At the time, people had to pay taxes for importing vegetables, but not for importing fruits. Biologically, fruits develop from a part in the base of a flower and contain seeds. (1)According to this scientific definition, tomatoes, as well as cucumbers, pumpkins, and green peppers, are fruits. (2)Contrary to what science says, most people consider the tomato a vegetable and use it as a vegetable. (3)For example, in some countries the tomato has been given names such as “golden apple” and “love apple.” (4)Tomatoes are eaten cooked or raw as many vegetables are and not traditionally served for dessert like fruits. The court concluded that the tomato was a vegetable based on the simple fact that most people considered it a vegetable.



この英文には、日本語の会話によく登場するトマトやベジタブルやフルーツやタックスといった単語が使われているので、英語が苦手な人でも大体の意味はつかめるかと思います。
この英文のテーマは「トマトは野菜なのかフルーツなのか」です。
しかしこの設問は、間違ってはいないけど不要な一文を選べ、と指示しています。つまり、この問題は文意を把握する力だけでは解けないということです。
この問題を解くには、この英文を書いた著者の意図を探らなくてはなりません。この問題を解こうとしている人は、「この著者は何を言いたいのか。なぜ著者は、トマトが野菜なのかフルーツなのかが気になるのか」といったことを想像する必要があります。
したがってこの設問は、全文を和訳できても解けるわけではなく、現国の長文読解の力が必要なのです。

英語が苦手な人は、単語や熟語や慣用句を大量に覚えたり、文法を丸暗記したりして克服しようとします。そのような「物量作戦」では、英語の偏差値は上げ止まってしまうでしょう。
それ以上の偏差値を目指すには、「英語を理解して英語を話す人の気持ちを知りたい」というモチベーションが必要になります。
そのような気持ちになれないと、英語モチベーションはずるずると落ちていってしまうでしょう。

ちなみにこの問題の答えは(3)で、判例では「トマトは野菜」と認定されました。

まとめ

さて、本稿の目的は、英語モチベーションをどうしても上げられない人に、英語モチベーションを下げない方法をアドバイスすることでした。
そのためには、次の3項目を実行してください。

・最低限「この単語帳は制覇する」という強い気持ちを持つ
・最低限「この1冊の文法参考書を制覇する」という強い気持ちを持つ
・最低限「嫌いにならない」という強い気持ちを持つ

この3項目さえ守っていれば、英語の試験問題に対して「何を尋ねられているのか全然わからない」と感じることがなくなります。まずはその状態を維持しましょう。
その状態が長く続けば、急に「英語、面白いかも」と感じられるかもしれません。日本語に加えてもうひとつ、英語というコミュニケーション手段を獲得できると、急に世界が広がるからです。その「ゾーン」に入ったら、英語モチベーションは大量にわいてくるでしょう。

 


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