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【苦手な人へ】センター試験の日本史はこう乗り切ろう

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大学受験の勉強を効率よく進めるには、苦手教科の勉強法と得意教科の勉強法を使いわける必要があります。どうしても肌になじまず、偏差値がなかなか上昇しない苦手科目は、無理して満点を狙う必要はありません。合格に必要な最低レベルをクリアできればよい、といった気持ちで勉強を進めましょう。

この記事が想定する読者は、日本史を苦手にしていながら、センター試験(2021年1月からは大学入学共通テスト)で日本史を選択しなければならない、国立大の理系学部を目指している受験生です。ここでは、合格に必要な最低レベルにまで引き上げる方法を紹介します。ポイントは「深追い」も「深掘り」もしないことです。

満点は狙わない

国立大受験は受験科目が多くなるので、メリハリのある勉強をしていかないと入試の日に間に合いません。

◇横浜国立大理工学部で考えてみる
例えば、横浜国立大理工学部の一般入試の科目は次のようになっています。

・センター試験5教科7科目(900点満点)
国語200点、数学200点、理科(物、化、生、地から2科目)200点、英語200点、地歴・公民(世B、日B、地B、現社、倫理、政経、倫理・政経から1科目)100点

・個別学力試験(2次試験)3教科(1,200点満点)
数学450点、理科(物理と科学)450点、英語300点

理系学部を狙っているのに、地歴・公民の「世界史B、日本史B、地理B、現代社会、倫理、政治経済、倫理・政治経済」から1科目を選ばなければなりません。このすべてを苦手としていても、横浜国立大理工学部を狙う以上は、1つは選択しなければなりません。そこで「よりまし」な日本史Bを選んだとします。消去法で日本史を選ぶ場合、配点に注目してください。

センター試験と2次試験を合わせると、横浜国立大理工学部の入試は2,100点満点です。日本史はそのうちの100点なので4.8%でしかありません。4.8%という数字はとても微妙で、捨て去ることはできませんが、全力を注ぐほどでもありません。

◇勉強エネルギーの配分を考える
なぜ全力で日本史を勉強しないほうがいいのでしょうか。それは他の科目の配点をみればわかります。英語はセンター試験と2次試験を合わせて500点なので全体2,100点の24%になり、数学と理科はそれぞれ650点なので31%ずつになるからです。

全力を注ぐのは、全体の86%を占める英語、数学、理科です。日本史に力を入れすぎてしまうと、英語、数学、理科への勉強エネルギーが分散されてしまいます。横浜国立大理工学部を狙うのであれば、英語、数学、理科は得意科目にする必要があります。得意科目であれば、勉強した分だけ知識を吸収できるので、得点を上げやすくなります。したがって得意科目にこそ多くのエネルギーを割くべきです。

しかし、苦手科目は、勉強してもなかなか知識を獲得できないので、得点が上がりません。したがって合格に必要な最低レベルをクリアしたら、それで満足するようにしましょう。
「切り捨てる」のではなく「見切りをつける」イメージで、日本史の勉強に取り組むようにしてください。

なぜ日本史を難しいと感じるのか

敵(日本史)に勝つには、まず敵を知らなければなりません。勉強自体は好きで、得意科目がいくつかあるのに、なぜ日本史だけを苦手にするのでしょうか。理由のひとつは「スケールが壮大すぎる」ことです。

日本史は縄文時代から現代史まで扱います。日本史では人物や出来事に注目します。したがって土器をつくっていた人から織田信長、そして第2次世界大戦後までを扱います。これだけ多種多様な人物と異質な出来事を一気かつ同時に扱うことは、大学受験の日本史しかありません。

しかも縄文時代の知識と第2次世界大戦に関する知識は、何の脈絡も持ちません。そのため日本史を苦手にする受験生は、雲をつかむような捕らえどころのない印象を持ちます。これが苦手意識の元となってしまうのです。

苦手意識が薄いジャンルをみつける

そこで日本史の勉強では「深追い」も「深掘り」もしないようにします。苦手な日本史のなかでも特に苦手なジャンルがあったら、それは思い切って捨ててしまいましょう。そのジャンルは勉強しないのです。勉強しなかったジャンルが入試に出てしまったら、潔くあきらめるようにします。日本史はジャンルごとに脈略がないことがあるので、あるジャンルだけを勉強して、あるジャンルは勉強しない、という勉強法が可能です。

日本史のジャンルは次のとおりです。
<原始・古代史>
旧石器時代、縄文時代、弥生時代、奈良時代、平安時代、社会経済史、文化史など

<中世史>
鎌倉時代、室町時代、院政、平氏、戦国時代、日宋貿易、日朝貿易、日明貿易など

<近世史>
安土桃山時代、江戸時代、織豊政権、戦乱の武将たち、江戸幕府、将軍の特徴、鎖国、幕政と藩政、狩野派、江戸文化など

<近代史>
明治時代、産業、経済、領土、租税、立法、立憲国家、議会政治、近代教育、外交史など

<近現代史>
大正、戦前の昭和、戦後の昭和、1920年代の出来事、1930年代の出来事、…1970年代の出来事、日中戦争、第2次世界大戦、沖縄史、北海道史

このジャンルのなかから、苦手であっても「よりまし」なジャンルをひとつ選んでください。まずはそこから勉強していきましょう。
よりましなジャンルをみつけられなかったら、好きなNHK大河ドラマや好きな武将、気になる社会問題、小説、歴史漫画、映画といった「きっかけ」を探してみてはいかがでしょうか。

日本史を扱った漫画のなかには、史実に基づいていないものもあります。また、漫画などは、ドラマチックなストーリーにしなければならないので、小さな出来事を誇張して描くことも珍しくありません。したがって、ドラマや漫画、小説や映画の出来事が必ずしも史実に基づいているとは限りません。

しかし、日本史を扱った漫画を楽しく読むことができれば、登場人物の名前と重要な出来事の大体の様子を記憶することができます。

文系学部を狙っていて、日本史を得意科目にしている受験生はこのような勉強法は採用すべきではありませんが、日本史の点数を最低水準に引き上げるだけでよい、理系学部狙いの日本史を苦手にする受験生は、一見「邪道」に思える勉強法を貪欲に採り入れていきましょう。

因果関係と前後関係が重要「要は流れを押さえる」

日本史を苦手にする人は暗記を嫌い、記憶することを苦手にする人が多いようです。数学や理科もある程度の暗記と記憶が必要ですが、理系科目の場合は基礎とコツを獲得してしまえば、応用問題を解くことができます。

しかし、日本史は覚えていないと解けません。暗記と記憶は、得意な人は得意ですが、苦手な人にとっては苦痛でしかありません。そこで日本史を苦手にする受験生は、因果関係と前後関係を先に捕まえるようにしてください。要するに流れを押さえるわけです。これならある程度、理屈で追跡することができます。

センター試験の日本史では、「このことを知っていますか」といった一問一答式の設問はあまり出ません。それよりも、資料や地図を正確に読み取ったり、出来事を古い順に並び変えたりする問題が受験生を苦しめます。地図を提示して、その場所で起きた出来事を答えさせる問題は、時代・出来事・地理の3つの知識を統合していないと解けません。つまり、1個1個の知識を統合する力が求められます。

また、絵画や陶器、建造物、宗教、文学といった文化史を苦手にする人も多いと思いますが、これも流れを重視した勉強法で克服していきます。芸術作品は突如誕生することはありません。前時代の作品に影響を受けて新しい芸術が生まれたり、その時代が求める作品がつくられたりします。

例えば「滝口の武士、北面の武士、西面の武士」

センター試験の日本史の出題者の心理を想像してみましょう。日本史は、この科目を苦手にする受験生にとっては壮大すぎるジャンルですが、センター試験の日本史の出題者は、設問の「ネタ」探しに苦労しています。過去に出題した設問とまったくおなじ設問を出すわけにもいかず、かといって他大学の入試で出た問題をコピペするわけにもいきません。しかも、高校生が学ぶ範囲を著しく逸脱した出来事を扱うことも禁じられています。

そこで出題者は、受験生たちが混同しやすい知識を突いてきます。受験生が日本史の記憶で苦労するもののひとつに「滝口の武士、北面の武士、西面の武士」があります。平安時代から鎌倉時代に登場する武士には、この3種類がありました。これらは似て非なるもので整理できていない受験生が多いので、入試の日本史によく出題されます。

滝口の武士は、天皇が住む内裏(だいり)を守る警護隊です。関係が深い天皇は、宇多天皇です。わざわざ警護隊が編制されたということは、それだけ治安が乱れていたからです。それが平将門の乱などにつながっていきます。

一方で北面の武士、西面武士は、上皇を守る部隊です。上皇は天皇の皇位を後継者に譲ったあとの尊号です。単純に「元の天皇」「今の天皇の父」「天皇の引退後の位の名称」と覚えておいてもよいでしょう。このように理解が難しい言葉を自分の言葉に置き換えるのも、日本史学習のちょっとしたコツになります。

ここで、「なぜ天皇を引退した上皇にわざわざ警護をつける必要があるのか」と疑問に思ってください。答えは、平安時代末期になると、上皇が政治を取り仕切っていたからです。それを院政といいます。天皇より上皇のほうが「偉い」存在でした。

そして、もうひとつ疑問を持ってください。それは「上皇は誰に狙われていたのか」という疑問です。答えは、比叡山や興福寺などの僧です。当時の僧は僧兵という軍事グループをつくっていました。それで上皇は、僧兵に対抗するために、新しい兵である北面の武士、西面の武士を組織しました。

北面の武士とかかわりが深いのは、白河上皇です。西面の武士は、北面の武士を補強する目的でつくられました。北面の武士とかかわっているのは、後鳥羽上皇です。ではなぜ後鳥羽上皇は戦力を増強したのでしょうか。それは鎌倉幕府に対抗するためです。

先ほど日本史の勉強では「1個1個の知識を統合する必要がある」「因果関係と前後関係をみつける」「流れを押さえる」ことが大切であると紹介しました。滝口の武士、北面の武士、西面の武士に関する知識を獲得するときも、「滝口の武士は宇多天皇の兵士」「北面の武士は白河上皇の兵士」「西面の武士は後鳥羽上皇の兵士」と覚えるのは苦痛でしかありません。

そうではなく、「なぜ名称が異なる武士がいたのか」「なぜ武装したのか」「誰に狙われていたのか」といったように、自分で自分に疑問を投げかけ、それに答えるように勉強していけば忘れにくくなります。

それではひとつ質問します。
なぜ「滝口、北面、西面」という名称がついたのでしょうか。これは簡単に調べることができるので、あえて答えは掲載しません。名称の由来を調べるだけで、記憶の定着率はさらに高まるでしょう。

そして、自分で疑問に感じて自分で調べる作業をすると、「知識を獲得する快感」を得ることができます。人は快感を得ると積極的にその行動を取ろうとします。日本史の勉強を快感にしてしまえば、苦手科目が一気に得意科目になるかもしれません。実際、いわゆる理系の人でも日本史の造詣が深い人はたくさんいます。

日本史ノートはこうつくろう

日本史が苦手な受験生は、ノートづくりが苦手です。数学や理科のノートづくりとはまったく方針が違うからです。日本史のノートは「自分より日本史が苦手な人にあげる参考書」をつくるつもりでつくりましょう。

具体的には、高校の教科書を補強するノートを目指します。日本史の教科書は基礎的かつ基本的なことしか書かれていません。説明文も短く、初見でそれを読んだだけでは日本史の知識を身につけることはできません。

教科書は、教師の口頭説明付きの授業で使われることを想定してつくられているからです。また、壮大なスケールをあの1冊に納めるには、キーワードと短い説明文しか掲載できないという事情もあります。

そこで日本史が苦手な人は、教科書を読んで「この部分は説明が足りない」と感じたら、その説明文をノートに書いていってください。参考書を参考にしてもいいですし、学校の授業の教師の説明もどんどん追記していってください。そのようにして書かれたノートは、参考書より詳しい参考書になります。

まとめ

受験勉強としての日本史は苦手でも、娯楽として歴史漫画を読む人はたくさんいます。教科書の日本史と漫画の日本史は、同じ日本史であるはずなのになぜこれほど極端に違うのでしょうか。

それはエンターテイメント性(視聴者を楽しめる意図)があるかないかの違いです。日本史の教科書は、極力エンタメ性を排除しようとしています。それでつまらなくなっているのです。日本史を苦手にする受験生は、娯楽としての日本史から接近してみてはいかがでしょうか。


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