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勉強の記憶で性格が変わる? なりたい自分になれる記憶術とは

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勉強は常に記憶との戦いです。テキストや参考書を読み、頑張って記憶しようとしても覚えられなかったり、昨日記憶したことが翌日にはもう思い出せなかったりすると、本を伏せて鉛筆を放り出し、自分の記憶力の悪さを嘆きたくもなります。「しっかりと勉強して記憶しなければ」と思っているのに覚えられない、といったことは誰しも経験するものです。しかし、そのとき自分はどんな気持ちでいるのかについて、真剣に考えたことのある人は少ないのではないでしょうか。

勉強の記憶力は悪くても、好きなアーティストの曲やゲームの情報など「本当に記憶したい」と思っていることは、意外と簡単に覚えられるものです。ここでは、自分の気持ちや考えを知ることで勉強の記憶力がアップする可能性についてご紹介します。

 

勉強に興味がないと記憶力は上がらない

「勉強しないといけない」と思って記憶するのと、純粋に興味があって記憶するのとでは、同じように勉強しているようでも記憶力に大きな違いが出てきます。英単語や数式は頭に入らなくても、ゲームのアイテムごとのワザやスポーツのルールには詳しい、ということが起こるのはなぜなのでしょうか。

 

■人は興味がないものは覚えられない

初対面の人の名前を覚えるテクニックとして、たとえば「ショートカットの山田さん」「友人と同じ名字の佐藤さん」「台風の日に会った山口さん」のように、何か他のイメージと関連づけて覚えると忘れにくい、というのがあります。これは相手の「名前」という無機質な情報を、映像や他の情報と関連付けることで記憶に残りやすくするためです。

初めて会う人の情報が少なければ、その人の名前は数ある本や映画の題名などと変わりがありません。それがどんな本か、どのような内容の映画かに興味を持つことで記憶に残るものとなります。初対面の人の名前を覚えるのが難しいのは「その人に興味がないから」ともいえるのです。

 

では、初対面でも「好きだな」と思える人ならどうでしょうか。一目惚れしやすい人とそうでない人の違いはあると思いますが、初対面で良い印象を持った人なら、名前どころか会話に登場した趣味や特技、小さなクセまで覚えられたりします。これは勉強についても同じで、勉強や学習で記憶力が思うように発揮できないとき、勉強で記憶しようとする内容に興味がないから覚えられないことが多いわけです。

 

■物事を記憶しているときの「気持ち」とは

「知らないことがわかるようになる」「知りたいことが満たされる」という状態は、本来人間にとって欲求の満たされる幸せな状態であるといえます。「知りたい」という欲求を満たすために、人は情報を記憶します。「なぜ知りたいか」「知ってどうするのか」という理由が特になくても「知らないことがわかるようになった」ということで、人は幸せな気分になることができます。多くの情報を得ることが成長に繋がったり、危険を回避できる状態を本能的に探しているためなのかもしれません。ゲームやマンガといったエンターテイメントの世界では、この人に備わっている「もっと知りたい」という欲求を上手にあおることで成長しています。攻略のための情報を見つけてアイテムを収集し、戦いを重ねていくことで「戦略」を学ぶ。特にゲームの中では、こういった情報の多さ、持っている知識の多さがそのまま「強さ」となって表れていますよね。

 

■勉強に興味がなく、受験もしたくない自分は「好きな自分」か

勉強で記憶しようとする内容がゲームやアニメのようにわかりやすく、楽しかったら苦労はしない、という声が聞こえてきそうです。確かに、進学しようとして学ぶことの中には、興味が持てないものがたくさんある、という人も多いでしょう。

しかし、ゲームや読書をする中で、全ての作業が100%興味のある内容か、と聞かれるとどうでしょうか。ゲームの中でひたすら単調な作業を繰り返す「レベル上げ」は結構地道な作業ですし、マンガやライトノベルを読むときも、世界観に必要な情報の部分は意外と退屈で、我慢しながら読んでいたりします。興味がなくても、つまらなくても、その世界を知ることが自分に必要なことだとわかれば、努力も暗記も辛くはないわけです。

勉強は、現実世界の中で自分に必要なこと。複雑な現実世界のなりたちを深く知るための入り口として、10代の頃に学ぶ内容はどれも大切なことだといえます。「そんなことはわかってる」と思っても、やらなければいけないことをやっていない罪悪感や、やるべきことをやれないでいる自分のことを好きになれない悩みもあるでしょう。もっとまっすぐに勉強に取り組む「好きな自分」になるためには、どのような考え方が大切なのでしょうか。

勉強の記憶力を上げるために知っておきたいこととは

勉強の記憶力が上がらないのは勉強自体に興味がないことや、大切だとわかっているのにできないでいるモチベーションの低さも原因となっています。勉強に対する気持ちの持ち方について、もう少し詳しく考えてみましょう。

 

■知らないことがわかると気持ちいいことを知ろう

勉強でわからないところを「まぁいいか」と流してしまったり、わからないところを「とにかく埋めればいい」と、わかったふりをして済ませてしまうことがあるのはなぜでしょうか。わかったふり、といって言葉が悪ければ、わかったつもりでそれ以上突き詰めて考えないでいると、記憶はすぐに薄れていきます。

勉強していると、ときどき「そうか!」と頭にランプが灯るような気づきを得ることがあります。そういうときはとても気分がよく、「もっと知りたい」という気持ちになっていると思います。忘れてしまうことに時間を費やすよりも、そういった経験を積み重ねていく方が自分も気持ちよく、記憶としても長く残るのです。

「知りたい」「覚えたい」と思って勉強していくと、そのことについてしばらく考え続けていたくなったり、想像力がはたらいて更にその先について知りたくなったりします。知らないことがわかることは気持ちのいいことであり、本来勉強とはそういうものなのです。

 

■受験の先に続く道を知ろう

「受験勉強」とは、文字通り受験に合格するための勉強です。志望校へ合格するために入学試験を受け、そこで高い成績を取るために対策を取り、必要な情報を記憶していくのですが、これが「ただ受かるため」だけの勉強だと考えてしまうと、どんな人でも辛くなってしまいます。

進学した先で何をどう学び、どんな知識を活かして働きたいかが決まっていないと、せっかく志望校へ入学しても目的がわからず、思うような学生生活が送れないことがあります。今している勉強の記憶が将来どういった道へと続いていくのか、ふんわりとでもよいのでイメージできるようにしておくとよいでしょう。

 

■「なりたい自分」を知ろう

将来どんな仕事をしたいか、どんな職業につきたいかについて、早くから決めている人もいれば、そうでない人もいます。現時点でどうなりたいかが決められなくても構いませんが、どんなことがうれしいか、何の勉強なら時間を忘れて取り組めるのかならわかると思います。

たとえば「ゲームをやるのが好きだから、ゲームやアプリを作る人になりたい」と考えた場合、ゲームの知識だけでなく、国語力や数学の知識も必要になってきます。ゲーム業界に限らず、どんな仕事を選んだとしても、時代とともに仕事の内容は変化していきますから、学校を卒業したとしても勉強は続きます。でも、そこにいることが楽しいと思えるなら、その勉強は苦ではないはずです。

「なりたい自分になるために勉強し、興味を持って記憶する」を続ける人生と「興味のないことをイヤイヤ勉強して、わかったふりで何も身につかない」人生のどちらがいいのでしょう。「なりたい自分」を知らないまま大人になってしまった人も、実は結構多いのです。

記憶したことが自分自身をデザインする

なりたい将来やなりたい自分を実現するために勉強し、必要な知識や情報を記憶し続けることは、未来の自分自身をデザインすることに繋がります。では、の記憶した情報を集めて、今とは違う別の人間になることはできるのでしょうか。

 

■役者はなぜ別人になれるのか

脳科学者として有名な茂木健一郎さんは、著書「脳力のヒミツ!」の中で次のようにいわれています。

“『人間の性格は、脳の中のさまざまなものを、どう組み合わせるかで決まります。たとえば、楽しかった記憶ばかりを引き出せば、すごく前向きで明るい性格になります。逆に、つらいこととか、悔しかった記憶だけを寄せ集めて人格をつくったら、ものすごく後ろ向きで、暗い性格になります。

~中略~

このように、記憶の組み合わせによって性格は変わるので、たとえ今の意識の中では納得できないような自分でも、記憶の持ち方によって、納得できる自分に変えられるということです。』“

(引用元:茂木健一郎著「茂木健一郎の脳力のヒミツ! 10人のプロは何を考えているのか」)

たとえば、役者や俳優はドラマや映画の中で、医者や弁護士といった自分とは全く違う人物を演じることを仕事にしています。医師として大学で学んだり、手術をした経験もなければ、弁護士として司法試験を受けたり、法廷に立った経験もないのにその役を演じることができるのは、その役者さんの中にある過去の記憶から、その人物を演じるために必要な情報を取り出し、そこに新しい情報としてのセリフや演出を記憶して、自分とは違う別人を作り上げるわけです。

自分が今まで経験してきたことが多ければ取り出せる情報も多く、その役や仕事にかける情熱があれば、演技はよりリアルに、魅力的なものとなるでしょう。演技をしている人達は、古い記憶と新しい記憶の両方を使い、自分の中から全く違う人物をデザインして引き出しているともいえるでしょう。

 

■「知っている自分」と「知らない自分」では性格も変わる?

日ごろからトレーニングや運動をよくしている人の運動神経が良いように、日ごろから記憶や暗記をよくしている人は、していない人よりも楽に記憶できるようになります。筋トレのように、記憶して定着させるプロセスを繰り返すことで脳が鍛えられ、ワーキングメモリーと呼ばれる、一時的に記憶を保持する機能が向上することがわかっています。

受験勉強において、このワーキングメモリーの記憶だけで挑むことはできませんが、一時的な記憶力が上がることで、受験勉強の効率がアップするというメリットがあります。いくつかの単語や数式を覚えるために、何度も参考書を確認しなくてもよくなったり、一時的に記憶しているうちに繰り返し記憶することによって、長期にたくさんの記憶を定着させることが可能になります。勉強や記憶を継続して続けていくことで、より効率よく勉強を進められる、いわゆる「勉強ができる」状態に近づけることができます。

数学の勉強ができるようになれば、ちょっとした統計や確率などが推論できたり、英語の語彙力がつけば、メディアの中で使われている英単語の意味も掴めるようになってきます。勉強の記憶量によって、その後に行うことすべてが、知らないで行っていたときとは違う見え方、聞こえ方になれば、まるで性格が変わったように見えることでしょう。

 

■人は他者の記憶によってもデザインされる

自分を変える要素としての記憶は、自分自身が記憶した経験だけとは限りません。人の脳には、他人から影響を受け、共感して自分の体験とするようなはたらきをする機能があります。とても努力している人や、勉強や運動を頑張った人に囲まれていると、知らず知らずにその人達の影響を受けて、自分も同じような気持ちになったり、似たような行動を取るようになるといわれています。

無気力な集団に囲まれていると無気力な人になりやすく、逆に情熱的な集団の中にいると、次第にアツい人間になっていったりします。良くも悪くも他人に影響を受けやすいタイプの人は、進学したときに周囲にいる人の性質になじみやすく、他者の記憶によってデザインされる部分もあるといえるでしょう。

ここでも、自分がどのような人間になりたいかがイメージできていれば、他者からの影響に惑わされることが少なく、自分が行きたいと思う道を歩いていくことができます。なりたい自分になるための努力を続けることで、やりたいことがたくさんできるようになり、同じような志を持った人が集まっている中へ入れば、より良い影響を受けられるという循環がはたらいていくわけです。

 

みんな勉強してるから、親に言われたから勉強するのではなく「こういう自分になってこういう生き方がしたい」というイメージがしっかりと持てていれば、そのプロセスに必要な知識を記憶するのはそんなに辛いことではありません。なりたい自分になるために知るべきことを知る、良い刺激が受けられる仲間が集まる環境へ行く。そんな思いで勉強に取り組んでみましょう。きっと勉強に対する意欲や意識が変わってくるはずですよ。

 執筆者:木村紫 
貿易業務とライター業を兼務するシングルマザー。人より少し豊かな人生経験から、恋愛・健康・転職・ライフハックなど、様々なジャンルで執筆活動中。ダメな人への優しいまなざしに定評がある。


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