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日本語スキルを磨かないと英語の長文読解は難しい【大学受験】

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英語は大学受験の「本丸」なので、これを克服しないことには第一志望合格は視野に入りません。それで英語が苦手な受験生は一生懸命、英語を学ぼうとするでしょう。
しかし、どれだけ英語学習に時間を割いても成績が上がらない人は、根本的な対策に乗り出してください。それは、日本語を磨くことです。

特に英語の長文読解は、日本語スキルがないと解けません。なぜなら、英語の長文をすべて和訳しても、その日本語がわからなければ正答を導きだすことはできないからです。
英語が苦手な人が英語だけを学んでも英語は上昇しないでしょう。それは、水が苦手な人がいきなり水泳を習っても泳げるようにならないのと同じです。

単語を覚えてもイデオムを暗記しても英語の学力が向上しない人や、英語の長文を1文和訳すると前の1文の和訳を忘れてしまう人は、日本語力を身につけましょう。

理想は「英語で考える」だが普通の受験生には無理

英語の学力を上げるために日本語を学ぶ必要がある、と聞くと、混乱する受験生もいるでしょう。それは英語教師のなかに、「英語の文章を読むときに日本語に訳そうとするからダメなんだ。英語は英語で考えなさい」と教える人がいるからです。
入試英語は、日本語に置き換えて解くべきなのでしょうか、それとも英語の思考力を身につけて解くべきなのでしょうか。

普通の受験生には高度すぎる
英語の思考力を身につけるメリットは2つあります。

<メリット1:英語の設問を正確に解ける>
英語を日本語にしたり、日本語を英語にしたりすることは、正しい方法ではない。なぜなら英語は英語を話す人の思考で書かれてあり、日本語は日本語を話す人の思考で書かれてあるからだ。だから英語を正確に理解するには、英語の思考力を身につけるしかない。

<メリット2:速く解ける>
英語を日本語に置き換えたり、日本語を英語に置き換えたりする作業は時間がかかる。英語の問題を英語の思考で解いていけば、解答時間を短縮できる。時間制限がある入試では、解く速さは強力な武器になる。

しかし、英語の思考で英語の設問を解く手法は高度すぎます。仮に高校1年生の春から本格的に受験勉強に取り組んだとしても、入試までわずか3年しかありません。しかも普通高校であれば、日常会話は日本語ですし、数学や理科や社会も日本語で学ぶので、毎日「英語漬け」になることもありません。これでは、受験に使える英語思考を身につけることはできません。

英語思考で英語の設問を解く方法は、これまで英語圏の国で過ごした経験がある人や、インターナショナルスクールに通ったことがある人が採用すべきものです。
いわゆる普通の高校生や浪人生が今から英語思考を身につけることは「遠回り」になります。しかも成功する確率は高くありません。

入試の英語の設問は日本語で出題されても難しい
そこで普通の受験生は、日本語思考のまま英語を解く方法を採用したほうがいいでしょう。
日本語思考で入試英語を解くことのメリットは次のとおりです。

<メリット1:慣れ親しんだ方法>
日本語思考を磨けば、英語の設問を日本語に置き換えるだけで難なく解くことができる。

<メリット2:大量に理解できる>
語学の力が学習能力の上限(ボトルネック)になってしまう。簡単な英語しかわからない人が英語思考で事象をとらえようとしても、簡単な事象しか理解できない。日本語で思考すれば複雑に考えることができるから、複雑な事象を理解できる。

メリット2についてはもう少し説明を加えます。理解力は、語学の力である程度決まってしまうのです。例えば「稲」も「米(こめ)」も「ご飯」も、英語では「rice」です。これは英語圏の人にとって、稲も米もご飯も同じだからです。しかし日本人は「稲」と聞けば田園風景を思い浮かべ、「米」と聞けば10kg入りの大きな袋を想像し、「ご飯」には「rice」の意味のほかに「朝食や昼食や夕食」という意味があります。

このように、言葉の多さは文化や風習の深さに直結します。帰国子女ではない普通の受験生の場合、どれほど英語を勉強しても頭のなかの英語の語彙の数は、日本語の語彙の数に及ばないでしょう。その状態で、英語思考を使って英語の入試問題を解こうとしても、深く考えて解答することはできません。

大学受験で出題される英語の長文には「太郎さんと花子さんが愛犬ポチと冒険に出かけました」といった幼稚な内容は出てきません。政治や経済や文化や環境に関係する文章が出てきます。
つまり、大学受験の英語の問題は、「それがすべて日本語で表記されていても」簡単には解けないものが多いのです。

和訳しながら忘れていく
英語の長文読解が苦手な人は、1文を和訳し終えた後に次の1文の和訳に取り掛かると、前の訳を忘れてしまうことがあります。
これは、英単語に該当する日本語の単語を並べているだけだからです。英語の長文読解の設問は、日本語の文章をつくる能力がないと解けません。

日本語がわからなければ英語もわからない

次の文章を読んでください。

噂は、2つの異なるプロセスが重なりあったときに広がる。2つのプロセスとは、大多数による追認と、集団内での勢いだ。

最初のプロセス、つまり大多数による追認という現象は、人は他人が考えることに左右される傾向を持つために生じる。一定数の人がある噂を信じ始めると、他の者もその噂を信じるようになる。

しかしほとんどの噂は、人々に直接的な知識がない話題や、個人的な知識がない話題に関するものだ。だから私たちの多くは、しばしば簡単に集団が生んだ噂を信じてしまうのである。

そして、ある集団の見解を受け入れる人が多くなると、噂を信じる人の規模は大きくなる。この状態になると、例えその噂が間違っていても、大勢の集団が噂を信じるリスクは現実のものとなる。

集団内での勢いとは、同じ考えを持った人が集まると、自分たちの考えをさらに極端にしたバージョンを信じるようになる現象のことだ。これは事実だ。仮にある集団のメンバーが、ある国の邪悪な意図に関する噂を信じる傾向を持っていたとする。そのメンバーたちが集まって話し合うと、その噂をより確信するようになるだろう。実際は、集団内のメンバーが信じていただけだったのに、噂に集団内での勢いが加わると、絶対的な確信に移行してしまうのである。



噂の発生メカニズムを解説した、論文に近いエッセイです。これは全体の4分の1にすぎません。また、冒頭部分なのでまだ深い論理展開が始まっていません。したがって比較的理解しやすい部分といえます。それでも十分、難しい日本語です。

この日本語は、東大の2018年度入試の英語の長文の一部を和訳したものです。実際の試験では、この内容が英語で書かれてあり、それを受験生に読ませているのです。
日本語に訳してもこれだけ難解であるのに、日本人の高校生の英語思考で英語の原文を理解することは至難の技です。
そのため、やはり英語を日本語に置き換えて日本語の思考で内容を把握して、設問に臨んだほうがいいのです。

受験英語の学力を上げるための日本語の勉強とは

受験英語の学力を上げるために必要な日本語スキルを身につける最良の方法は、英字ニュースとその日本語訳を読み込むことです。
この方法なら、時事ニュースや社会常識を知ることができますし、難しい日本語に接することもできます。

例えば、日刊英字新聞「ジャパンタイムズ」を発行している株式会社ジャパンタイムズ(本社・東京都千代田区)が運営しているサイト「the japan times alpha」( https://alpha.japantimes.co.jp/ )に登録すると、無料で月5本の日本語対訳付き英字ニュース記事を読むことができます。

このthe japan times alphaには例えば次のような英字ニュースが掲載されています。下に和訳を掲載してありますが、まずはそれを見ずに自力で和訳してみてください。

World News2019.2.15

Partisan investigations will hurt economy, Trump warns in State of Union address

 

Facing a divided Congress for the first time in his presidency, Donald Trump warned emboldened Democrats in his State of the Union speech Feb. 5 that “ridiculous partisan investigations” could derail economic progress.

 

Trump peppered his remarks with calls for bipartisanship, but his message clashed with the rancorous atmosphere he has helped cultivate in the nation’s capital – as well as the desire of most Democrats to block his path during his next two years in office.

 

The president’s remarks previewed how he planned to defend himself as the new Democratic House majority launches a flurry of investigations into his administration and personal finances.

 

“If there is going to be peace and legislation, there cannot be war and investigation,” Trump declared.

 

But with a government shut-down deadline looming, Trump faces a critical decision: whether to call a national emergency to build a wall on the country’s southern border. Such a move would certainly invite legal challenges and further divide the country. (AP)

(引用:「the japan times alpha」 https://alpha.japantimes.co.jp/article/world_news/201902/13304/



和訳は以下のとおりです。

トランプ米大統領が一般教書演説

 

大統領として初めて分裂した連邦議会に直面するドナルド・トランプ氏は2月5日の一般教書演説で、血気盛んな民主党に対し、「ばかげた党派的な捜査」は経済成長を妨げる可能性があると警告した。

トランプ大統領は発言の中で超党派の協力を繰り返し求めたが、彼のメッセージは、自身も助長した米国の首都の敵意ある雰囲気と衝突し、トランプ大統領の今後2年の道のりをふさごうとする大半の民主党員の願望ともぶつかった。

大統領の発言は、民主党が多数を占める新しい下院で政権と彼個人の財務に関して相次いで捜査が開始される中、どう自己弁護するつもりかをうかがわせた。

「平和や立法があるためには戦争や捜査があってはならない」とトランプ大統領は宣言した。

しかし、政府閉鎖の期限は迫っており、トランプ大統領は重要な決断を迫られる。それは、米国南部の国境に壁を建設するために非常事態宣言を出すかだ。そのような動きは間違いなく法的な異議申し立てを招き、更なる国の分裂をもたらすことになる。

 

(引用:「the japan times alpha」 https://alpha.japantimes.co.jp/zenyaku/world_news/201902/13436/

 


難しい英語と難しい日本語を何度も見比べるうちに、英語の論理展開と日本語の論理展開の違いに気が付くようになります。例えば、和訳された次の文章をもう一度読んでみてください。

「トランプ大統領は発言の中で超党派の協力を繰り返し求めたが、彼のメッセージは、自身も助長した米国の首都の敵意ある雰囲気と衝突し、トランプ大統領の今後2年の道のりをふさごうとする大半の民主党員の願望ともぶつかった」

元の英文に忠実な和訳ですが、日本語としては「たどたどしさ」が残ります。次のように変えたほうが自然です。

「トランプ大統領は民主党に超党派での協力を何度も求めたが、民主党はそれに応じることはなかった。民主党は、トランプ大統領の残り2年の政権運営を妨害しようと躍起だからだ。そしてトランプ大統領自身が招いた首都の混乱も、彼の今回の演説に水を差した」

このように整った日本語なら、内容を把握することができるでしょう。

日本語で知っていることは英語でも理解できる

これまで、難しい入試英語に日本語のスキルでどう立ち向かったらよいのか、をみてきました。
次に、日本語で知っていることは難しい英語で書かれていても初見で理解できることを証明します。これが証明されれば、「日本語を磨けば英語の力も伸びる」ことが正しいと理解していただけるでしょう。

以下の英文は、アメリカの知識層やビジネスパーソン向けの新聞「The New York Times」の記事の抜粋ですが、まずは一読してみてください。

Hello, Kitty! Warner Bros. Welcomes a Beloved Character

 

LOS ANGELES — For the first time, Hello Kitty is coming to Hollywood.

But will a character who never talks finally get to speak?

Warner Bros. said on Tuesday that its New Line division and the producer Beau Flynn had persuaded the Sanrio Corporation of Tokyo — after a five-year courtship — to entrust its $6 billion cat to the studio for a feature film. Sanrio, which created Hello Kitty in 1974 and groomed her into a merchandising superstar, has never brought the character to global movie screens. That has allowed her to remain silent: Hello Kitty has no mouth.

 

Well-known intellectual properties of all kinds — even apps and emojis — have become coveted by movie studios like Warner as a way to compete with a free-spending Netflix and a supersized Disney. “It’s a rare privilege to have the opportunity to explore the possibilities of such timeless I.P.,” Carolyn Blackwood and Richard Brener, the presidents of New Line, said in a statement about their feline coup.

 

The film deal also involves related merchandise rights and possible spinoff projects. Terms were not disclosed. New Line can use roughly 20 Sanrio characters, including the popular Gudetama, a disgruntled cracked egg, and My Melody, a rabbit who wears long ear warmers. (No word about Spottie Dottie, a Dalmatian with a pink headband.)

 

(引用:The New York Times」https://www.nytimes.com/2019/03/05/business/media/hello-kitty-movie-warner-bros.html

 

 

いかがでしょうか。「すらすら読める」という感触を得たのではないでしょうか。この英文の和訳は掲載しないでおきます。
この記事はキティちゃんについて書かれているので親しみが湧きやすいのですが、日本のキャラクタービジネスとアメリカのエンターテイメントビジネスについて言及した、かなり高度な内容になっています。それにも関わらず瞬時に意味を理解できたのは、キティちゃんに関する予備知識が十分にあったからです。さらに、ハリウッド、ワーナーブラザーズ、サンリオ、東京、ネットフリックス、ディズニーといった、知っている単語や実物をイメージできる単語が散りばめられているからです。
これが「日本語で知っていることは英語で書かれてあっても理解できる」ことの証明になります。

まとめ

なぜ日本語を磨くと英語のスキルが上達するのでしょうか。それは両方とも言語だからです。
言語とは、思考や抽象概念や具体的な物体などの様子を、音声と文字だけで第三者に伝えるツールです。したがって「抽象概念→英語→理解」でも「抽象概念→日本語→理解」でも、抽象概念を理解するという結果は変わりありません。
ならば慣れ親しんだ「抽象概念→日本語→理解」のほうが、抽象概念の理解がすすみます。英語を和訳しても意味をつかめなければ、日本語スキルを疑ってみたほうがいいかもしれません。


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